愛知県名古屋市の道徳ハウスで「第一回 あゆち芸術祭」に参加して、今日で1週間経ちました。
まだなんとなく余韻が残っています。くすのきのお客様に報告しつつ、高塩も振り返りをしたいと思います。

5/24(金)初日。
19:00 獅子見琵琶(三重県明和町)「しあわせな日々(第二幕)」リーディング(サミュエル・ベケット作)
高塩はこの作品を駒場アゴラで観ました。琵琶さんがとても可愛くて、ラストの情景はとてもキレイでした。今回は第二幕だけのリーディング。ト書きも読んでくれました。このト書きの読み方が凄かった。
「ト書きって音読する事が出来るんだぁ。ト書きの内容が音でわかる」
獅子見琵琶さんの演技力、顔の表情、音の高低緩急。
「わたし、琵琶さんと一緒の舞台に立ちたい!」と思いました。

5/25(土)二日目。
14:00 こたとのぼる(長野県松本市)「タバコの害について」(アントン・チェーホフ作)
前に書きましたが、こたとのぼる(古田土昇)さんとは大多和の弟子同士です。弟子歴はこたとさんの方が、はるかに長いです。始めの頃は役者さんでしたが、いつの間にか演出家になっていました。その演出を見ていると「わあ、大多和が横にいる!」というくらい演出が似ています。大多和の演出も弟子のこたとさんが引き継いでくれています。私はしません、出来ません。
さて、役者のこたとさんの一人芝居。この作品も昨年長野県松本市で観ました。制作でもある河野晴美さんはこたとさんの奥さんです。松本の舞台では「はるみちゃんが、袖にいます!」というセリフで大うけでした。今回はかなりスタンダードな内容で時間も短かったです。「もうちょっと観たかったなぁ」というのが高塩の感想でした。

18:00 進 智恵子「火宅」(川本喜八郎「火宅」より)
今回初演です。演出は双身機関の寂光根隅的父(じゃこうねずみのパパ)さんです。この日の午前中にゲネだったのですが、ジャコウさんが来ない。みんな、心配はするけど、淡々とスケジュールをこなしていく。フツーだったらもっとワラワラするでしょ。でも誰も動じない。ある意味すごい!進さんも初演なのに自然体。
でも心の中は...わからない。
で、本番!
くすのきのお客様が静岡県御殿場市から観に来て下さって「火宅」を観て「くすのきの芝居に似ている」という感想をいただきました。ああ、そうかもしれないと思いました。立っているだけで居るだけでちゃんと舞台に存在している。進さんはそんな役者さんでした。

5/26(日)三日目。
11:00 田中りえダンスwith加藤真紀子「白昼夢明々暗々」
このお二人のゲネは前日夜の公演後でした。まず会場づくり。
うすい白の幕が降ろされ、四角い空間が出来ました。それを取り囲むように客席が作られました。幕にはプロジェクターで動画が映されました。
仕込みは夜でしたが、本番は午前中です。会場は満席。光が入るところにはカーテンや幕が張られ、その隙間から光が漏れています。まさに白昼夢のような異空間の中に、生きているダンサーと演者が世界を創っていきます。映された動画はゆらゆらと揺れ、カーテンの開け閉めで光が差し込み、また暗くなる。音楽、声、映像、ダンス、光。
まさに芸術祭でした。プロのダンサーの田中りえさんを本当に至近距離で観られたこと。加藤真紀子さんの声、動きはどちらもスックと立ち上がっていました。
動く美。ただただ、美しかったです。

15:00 高塩景子(東京都国立市)語り芝居「ざしき童子のはなし/祭の晩」(宮沢賢治作)
高塩がこの2作品を上演したのは9年前。おまけに午前中のダンスに圧倒されて、かなりのプレッシャー。
どうしたもんかと考えても時間はどんどん過ぎて行く。はい、本番です。
くすのきの芝居を観るとお客様の半分は寝ます。心地良いんだろうなぁと思いつつも「声が一本調子じゃないだろうか」とか「音が変わってないんじゃなかろうか」とかは、いつも思っています。でも道徳ハウスのお客様は真剣に観て下さって、寝る。「ああ、そうか。これはもう、くすのきの芝居は子守唄なんだ」と開き直りました。
今回、音響の尾関崇之さんに音を入れてもらいました。くすのきの3人がやっていた頃は舞台上で役者が音を入れていました。音響さんに入れてもらうと間が違う。これも発見。「音響さんが音を入れるタイミングは、お客さんが気持ちの良いタイミングなんだ」と。たぶん役者の息でやってたので、かなりせわしかったんじゃないかと今、思っています。もう遅いけど。

「あゆち芸術祭」の3日間。
ジャコウさん、本当にお世話になりました。ひたすら楽しかったです。ありがとうございました。