「生きる」という事

坪内逍遙訳「シェークスピア全集」(新樹社)読了。

凄い。面白い。底の見えない巨大な創造作品。今の私よりもずっと若くしてこれを創った。昔の人は今の私達よりも人生は短くても太く生きた。これらの作品は二十代では二十代での面白さを、三十代では三十代での面白さを、そして八十代になって改めて向き合ってみると「ああっ、そうか!」「えっ、こんな面白い処を、読み飛ばしていたんだ!」「おや、何でここをカットして上演しちまったんだ!」「あらっ!おやっ!まあ!」の連続。それまでは何を読んでいたのだろう。でも、人生ってそんなものかも。そう、偉大な作品、偉大な作家の創造はどこまでいっても切りがないし、読み切れない。だから何百年も読み続けられるのだ。そんな大きな作品を、無謀にも自分の身の丈に合わせて見切ろうとする。それは結果として自分の成長を止めてしまう事だ。人生をいつまでも、最後まで楽しむには、生き続ける為には、謙虚に、飽きずに、倦まずに、その日その時を大切にして、稽古、稽古、稽古。学び、学び、学ぶ努力を。

すれば人生は楽しみを、創る喜びを、決して自分を見捨てはしない。

そう、読了直後の今、以前のように安直に、これらの作品に立ち向うのが怖くなった。

どの場面も、どの人物も、面白い、魅力がある。そして、それを舞台上で生かすには、生きるには、豊かな演技力が必要。真摯な努力、弛まぬ精神、地道な稽古の積み重ねが必要。下手でもいい、正面から向き合って、当って砕けろ!それらの作品に今の私に出来る事。今の私の条件の中で、どうそれらを具体化していけるのか、はたして上演が可能なのか・・・。失敗を恐れずに正直に、全力でぶつかっていく事。

今、生きて、演劇人として生きて、生き続ける私。今、私はそれをどう具体化して行動すればよいのか。どう、舞台化するのか・・・。

難しい、しかし遣りがいのる宿題を突き付けられた。

そう、生きる事はチャレンジする事。

それが生きる楽しみなのだ。